2007年3月20日毎日新聞朝刊
偽造医療品が増えている。大阪では去年6月、勃起不全(ED)治療薬「バイアグラ」のニセモノをインターネットなどで販売していた 韓国系マフィアを府警が摘発、密造・密輸の実態が明らかになった。しかし、ネット上には現在も処方せん無しでバイアグラなどを 不法販売する業者が氾濫している。製薬会社などは「ネット販売の薬にはニセモノも多い」と注意を呼びかけている。【小林祥晃】

本来、バイアグラは医師の処方箋なしでは購入できないが、薬事法は、自分が服用する薬を一ヶ月以内に使い切る数量まで個人輸入することは認めている。しかしネットで増えているのは、この制度を利用した多数の「個人輸入代行業者」が不法に海外のブローカーから偽医薬品を仕入れ販売していると言う事だ。WHO(世界保健機関)は昨年、ネットで不法販売される薬の半分は偽造薬だとする調査結果を発表した。
バイアグラを販売するファイザー(東京都)も、昨年の偽造バイアグラの流通量は、正規品の約2.5倍と推計。「偽造品は不衛生な工場で製造され、有効成分に偏りがあったり、不純物が混入していたりして危険」という。海外ではバイアグラだけでなく、高血圧やコレステロール値を下げる薬品もネット上に出回っているといい、製薬業界は「放っておくと日本でも慢性疾患治療薬などが出回り、健康被害が広がる恐れがある」と危機感を強めている。偽造薬はアジアなどで密造されることが多い。府警が摘発した韓国系マフィアも、中国の工場でバイアグラを密造し、国際小包などで大阪を拠点とする仲間に発送。それらを国内業者が買とり、インターネットなどで販売していた。
押収した偽造薬は、不法販売事件としては史上最多の約10万錠にのぼった。事件後、ED治療薬メーカーは偽造役の流入を防ごうと、税関に「偽造品の輸入差し止め」を申し立てた。偽物と疑わしい荷物はメーカーが鑑定できるよう、その場で発送をストップする制度だ。税関も水際での取り締まりを強化している。しかし、ある医療関係者は「小口の国際小包などで入ってくる医療品をすべて取り締まるのは不可能ではないか。それよりも医療品の個人輸入の制度を見直し、ニセモノ輸入代行業者を規制することが必要だ」と指摘する。